第25回
生涯現役
私の好きな小説の一つである瀬戸内寂聴さんの『いよよ華やぐ』というお話しがあります。
実際に存在した鈴木真砂女さんという俳人の人生を元に書かれたお話しで、90歳を過ぎても凛として華やぐことを忘れることなく現役を貫き通した真砂女さんと、その周りにいる同じく老いても社会に出て、活き活きと生活している女性たちの人生模様が書かれています。
会話の隅々に、まるで若い娘たちのような会話が出てきて、歳を重ねても尚まだ華やぎ続ける様はほほえましく、これを読んだ後は老いることの不安が消される思いでした。
そして何より、いくつになっても女性である意識をしっかりと持ち、自分に厳しく前向きに生きていく力は素晴らしく、少々天衣無縫な生き方も彼女の人生の彩りとなっているところが大変魅力的です。
他にも、歳を重ねても輝き続けているお手本となる女性がいます。
黒柳徹子さんのお話で、90歳を過ぎたお母様が入院先のベッドの上で顔にシワ伸ばし用のパックをしていたと言うことを聞きました。
他にも、テレビを見ながらソファに腰掛け足を持ち上げ腹筋を鍛えていたなど、歳を感じさせない行動の面白いエピソードがたくさんありました。
そして最後は大変穏やかに笑顔を浮かべて亡くなられたそうです。
作家の吉行淳之介さんのお母様である吉行あぐりさんも大変元気に長生きされている方で、90代になっても美容師という仕事を現役で続け、海外旅行に90歳を過ぎてから目覚めたそうでその身体と気力の元気さには驚いてしまいます。
このお二人ともNHKの朝の連続テレビ小説のモデルとなり、波乱万丈でありながら明るく逞しく生きた女性の人生模様に魅せられました。
フラメンコの世界でも生涯踊り続け現役を全うした人はたくさんいます。
ダンサーという、人の視線にさらされることが多い職業にとって老いることがつらい現実となる中、それを超越したものを身につけ、最後まで自分自身を表現しきれる素晴らしいダンサーには頭が下がる思いです。
今日で私の『朝の随想』出演は最後となりますが、色々な話をさせていただく中、改めてこれからの自分自身の生き方を考えることができる良い機会となりました。
世の中には様々な人生を背負った人達がいるということ、生きて行く上で避けることのできないことがあること、そしてそれにきちんと立ち向かって行かなくてはならないこと、それによってもっと良き人生が送れるのではと感じています。
まだまだ未熟ではありつつも、少しは成長できたかな?とも思っています。
今までつたない話をお聞きいただき本当にありがとうございました。
これからも、舞踊家として、母親として、女性として、そして人としてもっと成長できるよう、生涯現役を志し、いつまでも社会に貢献できるような人生を送りたいと思っています。
皆さんもお元気で素敵な人生をお送りください。 半年間、本当にありがとうございました。