第22回
スペインの春祭り
春の訪れを感じる頃になると、スペインの春祭りを思い出します。
毎年、セビリアで行われる世界でも有名なお祭り『フェリア・デ・セビージャ』です。
その前にキリストの復活を祝う『セマナサンタ』と言われる宗教色の強い聖週間があります。
このお祭りは一週間続き、学校も休みになり、町はキリストやマリア像を担ぎ出した行列と見物客でいっぱいになります。
そのあと一週間あけてから、だいたい4月の中頃に『フェリア・デ・セビージャ』が始まります。
つまり、この時期は一ヶ月のほとんどがお祭り気分で過ごすことになります。
特にフェリアの前は、その準備をする買い物客で町はごった返し、賑やかになります。
はじめてこのお祭りを経験した時は、あまりの規模の大きさにびっくりしてしまいました。
普段は空き地となっているところがフェリア会場になるのですが、その敷地面積は120平方メートル、東京ディズニーランドとディズニーシーを両方合わせたよりも広いのです。
そこに1000軒以上のカセータといわれる仮設小屋が立ち並びます。
カセータにはオーナーがいて、そのオーナーの招待客しか入ることができないのですが、中には観光客相手の一般客用のカセータもあり、そこには誰でも入ることができます。
セビリアのフェリアは人気が高く、新しくカセータを所有したい人たちが900以上も空き待ちをしていると言われています。
カセータの中には厨房やバーやトイレが完備され、椅子とテーブルが並び、踊るスペースも確保され、仮設小屋とはいえ、そこで食事もでき、ずっと過ごせる快適な空間となっています。
そのカセータの立ち並ぶ会場の正面入り口にはそのお祭りのシンボルとなる大きな門が建ちます。
初日の午前0時にはその門とカセータの電飾が点灯され、もの凄いどよめきの中、祭りが始まります。
フェリアは一週間、昼夜問わず、歌い、飲み、踊るお祭りです。
赤ちゃんからお年寄りまで、そのほとんどの女性たちはこの日の為にフラメンコ衣裳に見るようなフリルたっぷりの華やかな衣裳を新調し、着飾って出掛けます。
男性の中には、腰高のズボンに短いジャケット、ウエストに腰巻きをしたスペインの伝統的な衣裳に身を包み、つばの広い帽子をかぶり、馬車や馬に乗り会場に現れる人がたくさんいます。
その馬の後には着飾った女性を乗せ、その光景はおとぎ話のようで、とても素敵です。
そして、地元の曲である『セビジャーナス』という曲に合わせて、歌い、踊り、老若男女が楽しいひとときを分かち合う、夢に包まれた、非日常の空間となります。
セビジャーナスという踊りは、うちの教室でも入門した人が最初に習う踊りですが簡単なようでいてなかなかさまになるまでに日数がかかります。
しかし、セビリアの人達は実に身のこなしが上手く、小さい子どもからお年寄りまで、皆が楽しそうに踊っています。
他にも屋台や、遊園地もあり、徹底的に楽しむ要素が満載のお祭りです。
こんな非日常を味わい、祭りが終わるとまた普段の生活に戻るこのメリハリのある生活が、スペイン人たちの明るく陽気な性格を維持する秘訣なのかもしれません。