第5回
彩り豊かなセビリア
スペインの南に、アンダルシア地方最大の都市であるセビリアという街があります。 フラメンコが盛んなところであり、フラメンコを学ぶほとんどの人がセビリアを訪れます。
私も、このセビリアに暮していました。
スペイン国内で4番目の人口をもつこの街は、何不自由なく暮せる都市でありながら、しっかりとスペインらしい情緒も感じられる美しい街でもあります。
100年以上かけてつくられたという、スペイン最大の大聖堂カテドラルはセビリアの中心街に位置しています。
この教会にはコロンブスの墓が安置されていて、中に入ると荘厳な空気に包まれ、巨大なステンドグラスの美しさには圧巻です。
その横に建つ、高さ75メートルのヒラルダの塔はセビリアのシンボルとなっています。
街のいたるところから眺められ、夜になるとライトアップされ、より美しさを増します。
その隣には大きな美しい庭園を持つ宮殿アルカサルがあります。
これら全てが世界遺産でありながら、賑やかな中心街にしっくりと溶け込んでいます。
スペインのアンダルシアといえば白壁に石畳の狭い路地・・・
街の中心の繁華街から少し脇道を入っただけでひっそりとした住宅街に出くわします。
窓辺にはゼラニウムの赤い花やブーゲンビリアが咲き、パティオと呼ばれる中庭にも色とりどりの植物が溢れ、ガイドブックや絵はがきで見るそのままの風景が目に飛び込んできます。
スペインの日中の太陽の日差しは強烈なため、道を狭くすることによって陰を多くし光を遮り、太陽の熱を吸収しにくくするために白い壁が多いのです。
そのせいか車もほとんどが白っぽい色ばかりで、黒っぽい車はあまり見かけません。
街中のほとんどの街路樹はオレンジの木で、濃い緑の葉と共に白い花をつけたり、オレンジ色の実をつけたり、一年中街を彩っています。
公園もたくさんあり、大きな木々に囲まれ緑も豊富で、人懐っこい白い鳩がくつろいでいます。
セビリアというと『セビリアの理髪師』を思い浮かべる方が多いようです。
セビリアを舞台にした代表的なオペラの一つで、他にも有名な『カルメン』があります。
『カルメン』に出てくるタバコ工場はセビリア大学の校舎として今でも残っています。
そして同じくオペラ『カルメン』の舞台となったマエストランサ闘牛場は18世紀につくられてから今も伝統的な闘牛場としてそのまま残っています。
歴史的な建造物と自然が街のいたるところに残る中、繁華街には流行のファッションで身を包んだ若者が溢れ、近代化も進んでいます。
ところが、これらがうまく共存できているのです。
それはきっと、街への愛着と尊敬が、この美しい街に生まれ育っている間に自然に身についているからでしょう。
セビリアに暮す誰もが、「この街が一番!」と思っているような気がします。