第10回
スペインから見た日本
現在の日本は本当に便利で、豊かで、安全で、恵まれた国であることをつくづく感じます。
これは、スペインで暮してから切実に思うようになりました。
スペインの駅には改札がありません。自分で乗る列車を探し、ホームへ行き、出発時間までに乗りこみます。
出発まであと何分だとか、どこ行きだとかのアナウンスは全くなく、時間になると静かに動き出します。
降りる時も、あとどれくらいで到着とかのアナウンスがないので、降りる駅が近くなったことを自分で確認して降りなくてはなりません。
バスもそうです。
ちゃんと外を見て、降りるところを確認していないと、乗り過ごしてしまいます。
タクシーは、自動ドアではないので自分でドアを開けて乗ります。
降りた後、つい癖でドアを閉め忘れ、運転手さんに注意されたことが何度もあります。
スペインから見たら日本は過保護すぎるのかもしれませんね。
デパートや、街なかの大きな店などは、必ず入り口に防犯用の感知器があり、警備員が立っています。
警備員がいないような小さな店は入り口が閉まっていることが多く、ガラス越しにお店の人が来た人を確認して、鍵を解除してもらってから入ります。
スーパーには大きなカバンを提げて入ることはできません。入り口にクローク、もしくはコインロッカーがあり、そこに預けてから買い物をします。 自動販売機はありません。
もし日本のようにどこにでもあったら、すぐに壊されてしまうでしょう。
公衆電話も、壊れていないのを探すのに一苦労です。
スペインから見たら、日本は本当に安全だということがよくわかります。
スペイン人から見ると日本の電化製品、ゲームソフト、アニメ、空手など、興味深いことがたくさんあるようです。
ビデオやカメラなど私が持っているものに「日本製?」と必ず聞いてきて、すぐに欲しがります。
日本のアニメは大変な人気で、こちらでもお馴染みのアニメキャラクターがむこうのテレビではスペイン語の吹き替えで喋っているのが妙に可笑しいです。
主題歌は日本語のままなので、それを子どもたちに歌ってあげると、羨望のまなざしで見られ、たちまち人気者になってしまいます。
日本の時代劇もよく放送されています。
ある日、テレビで見た侍が食事中に飛んできたハエを箸で捕まえたのが凄くかっこよかったと言い、箸の使い方を教えてくれと言ってきた青年がいました。
いくら日本人でも、ハエは捕まえられないと言うのを全く聞き入れず、必死に箸の持ち方を練習していました。
日本人男性は皆、空手ができると思っているらしく、意外にも強いイメージがあるようです。
スペインで町内のお祭りがありフラメンコショーに出させてもらった時のことです。
なんと、フラメンコの前座は空手ショーで、地元の空手教室に通う人たちが空手着を着て誇らしげに舞台に上がっていました。
その舞台袖でフラメンコ衣裳を着た日本人の私が、出番待ちしているとは…何とも不思議な気持ちでした。
スペインから見た日本人は、器用で、真面目で、賢く、強くて、なかなかの好印象のようです。