第17回
食の大切さ
両親が共稼ぎで、特に母は看護士として働いていた為、時間が不規則で、中学くらいの時から我が家の夕食の支度は私の役目でした。
部活などをしていると帰りが遅く買い物はできないので、宅配で料理の材料が家に届くサービスを利用し、家に帰ると玄関先に置いてある材料を箱から出し、レシピを見ながら作っていました。
おかげで、まるで料理通信講座のように、自宅にいながら色々な料理のレパートリーが増えました。
そのうち、レシピどおりに作るのが面倒になり自分でアレンジしたり、付け加えたりしていく楽しさも増え、勉強もせず、毎日料理ばかりしていました。
毎朝、お弁当も自分で作り、友人たちにも「お母さん、料理上手ね。」と言われるのもまんざらでもなく、そういうことにしておきました。
そして何より、未熟な料理を両親が喜んで食べて、褒めてくれることが、上達の秘訣でした。
その後も、どういう生活環境になっても私の料理担当は常につきまとい、今ではスペイン料理の店まで持つようになってしまいました。
スペインに行った時、私のフラメンコの師匠が男性でありながらものすごい料理好き、そして料理上手で、レッスンが終わると料理を教わるという毎日でした。
気が付くと、教室から近い私の家はクッキングスタジオと化し、そのまま試食会を兼ねたお食事会となりレッスン帰りの子どもたちのランチルームとなっていました。
大勢で食べる食事は楽しく、おいしく、スペインにいる間は食べることに不自由することなく、大変恵まれていました。
食育ということが最近よく言われるようになりましたが、食べるということは本当に生きていく上で大切だということが良くわかります。
現代の子どもたちは、塾や習い事で忙しく、親たちも仕事が忙しく時間が不規則になり、家族揃って食事する機会が少なくなった家庭が多いと言われています。
個食といって、ひとりで食事をする子どもがいるらしく、それでは食事も楽しくおいしいものとは思えないでしょう。
そして、学校の給食の時間があまりにも短いことを聞いてびっくりしたことがあります。
時間に追われて急いでとらなくてはならない食事なんて、食育とは相反することなのではと疑問に思います。
作る側から言わせていただくと、やはり食事はゆっくりと楽しく味わってもらいたい。
それによって、身も心も豊かになってもらえたら、料理するほうももっと楽しくなります。
日本は本当に食が豊かな国です。
それゆえ、食への執着が薄れつつある現代の子どもたちの為にも、作ってくれる人への感謝と食べられるというありがたさを感じ、もっとゆとりをもって、楽しく、おいしく食事ができる環境を心がけたいものです。
そのためにも料理の腕ももっと磨かなくてはなりませんね。
これからも頑張ります。