第6回
マイペースなスペイン時間
スペインで暮し始めたばかりの頃は、環境の違いや人々の性質の違いに戸惑うことばかりでした。
言葉の違いから、思いが伝わらずにイライラしたこともあります。
しかし、その国にいる以上そんなことも言っていられません。
まさしく「郷に入ったら郷に従え」です。
スペインの朝は日本と同じように通勤や通学の人達の交通ラッシュで始まります。
その後、家族を送り出した主婦たちがスーパーや市場へ買い物に出掛け、外は近所の奥様たちの買い物ラッシュとなります。
ここは話し好きのスペイン人、道すがら立ち話に夢中になる人や、ベンチに腰掛け井戸端会議するお年寄り、バルといわれるカフェテリアに入りコーヒを飲みながら世間話をする人などでいっぱいになります。
その後、午後二時くらいからほとんどの店が一旦閉まり、家に戻りゆったりとした昼食をとります。
日本とは違い、時間がたっぷりあるこの昼休みにゆっくり会話をしながら食事をし、シエスタといわれる仮眠をとり、また5時くらいから店が開き仕事が始まり、その日二回目の通勤ラッシュをむかえるのです。
そして夜になると再び帰宅ラッシュがあり、繁華街に繰り出す人や、近所のバルでビールを飲みくつろぐ人など、皆が思い思いに一日の終わりを過ごしています。
日暮れが遅く、商店は9時くらいまで開いているので、平日の夜でもショッピングに興じる若者で街はいつも賑やかです。
夕食は10時くらいからお酒とおつまみ程度で簡単にすませます。
働いただけ思い切り遊び、どんなに夜更かししても、翌日は元気に過ごすタフさはスペイン人の特徴でもあります。
日本のようにバスや電車の中で居眠りしている人も見たことがありません。
スペインの国内線の飛行機に乗ったときも眠っている人どころか、あまりにも飛行機の中が話し声でうるさくてびっくりしたことがあります。
このお喋り好きな人達のせいで、日常待たされることが多々あります。
買い物に行くとレジ前が行列していても、お店の人と話しが弾むと一向に前に進まないのです。
それでも文句を言う人がいるわけでもなく、急いでいる様子もありません。
スペインでは早足や走っている人は泥棒だけ、と言われるくらい道で急いでいる人を見かけません。
時間に遅れても、皆色々な言い訳を言って悪びれた様子もなく、時間に曖昧なのは大きな問題ではないようです。
ある日、流しの水道管が水漏れして修理を頼んだところ、業者の方に「すぐに行く」と言われてから実際に来るまでに丸三日かかったことがあります。
最初は、何においても時間に曖昧なことに苛立っていたのですが、そんなことは仕方ない、これが当たり前なのだと思えるようになりました。
何をするにも、マイペースで、自由で、明るく、ストレスとは無縁の人達が多いようです。
日本の現状から比べると、本当に羨ましい限りです。