第3回
目標に向かって
新潟にてフラメンコの指導を始めたのは20歳の時でした。
案の定、新潟でのフラメンコの認知度は低く、というより『無』の状態でした。
すぐにでも実現したかったスペイン行きはしばらくおあずけで、まずは地盤作りから始めたのです。
短大を卒業し、東京から帰郷したばかりだったので、社会にも出たことのない、世間知らずの娘でした。
そんな人間が人様から先生と呼ばれ、今思うと申し訳ない限りです。
最初はたった二人だった生徒も少しずつ増えてきたものの、仕事といえるほどのものではありませんでした。
親元にいたおかげで住むところはあり、食べることはできましたが、自活できるわけでもなく、スペインへ行く資金を貯金するどころの話ではありませんでした。
その頃、同年代の友人たちは学生を終えると各々の仕事を見つけ就職するのがあたりまえでした。
ちょうどバブル時代の始まりと重なり、ブランドのバッグを持ち、車を持ち、ボーナスをもらっては海外旅行に行き、遊びも仕事も絶好調の人がほとんどでした。
例外もいましたが、私ほどの例外は周りを見渡してもいなかったような気がします。
それでも、いつか近いうちにスペインへ行くぞ、という目標があったからこそ明るく過ごせたようなものです。
しかし、スペイン貯金どころの話しでない私はアルバイトを始めました。
工場、デザイン事務所、法律事務所、内職など、知り合いの方々からご紹介いただき、それぞれの場で社会勉強もさせていただき、資金繰りも少しずつですができるようになりました。
そして4年後、24歳の時にようやくスペイン行きが実現しました。
人というのは目標があるとないとでは、日々の生活の張りが違うような気がします。 別に大きな目標でなくてもいいのです。
例えば、来月旅行に行く、来週コンサートに行く、明後日友人と食事に行く、今夜趣味の習い事に行く、どんな些細なことでも目的があるだけで生き生き暮せるのではないでしょうか?
若い頃はがむしゃらに夢に向かって行けたけれど、年を重ねるごとに色々なしがらみや気力と体力の衰えも感じ、現実を生きるのが精一杯になってきます。
でも、小さなことでいいから目標を持って生活することは老いも若きも可能だと思います。
皆さんは何か目標を立てて過ごしていらっしゃいますか?
私はとりあえず、この【朝の随想】を半年間無事にやりとおすことが今の目標です。